レオナール・フジタ展

レオナール・フジタ展へ

上野の森美術館
幻の群像大作4点すべてが、日本で初めて一堂に会するという展示。おそらく日本における最初で最後の一挙公開になるだろうとのこと。
「ライオンのいる構図」

「犬のいる構図」

「争闘I」

「争闘II」

それぞれが縦3メートル、横3メートルあり、2点1組。
これは、本当に物凄い大作。というとあまりに言葉が簡素だけれど、まさにそうだった。
これらの絵に現れる人間の裸体は、石膏のようになめらかな、乳白色の肌をしている。その質感と、肌にありのままに描かれた陰影は、体の肉付き、骨のごつごつした様を見事に表現している。また、色彩は乳白色とグレーの濃淡であるが、墨ではなく油彩で描かれており、そのためか量感があふれていた。ただその輪郭線はとても繊細な筆致だった。
このスタイルは、これらの大作を描く以前に、藤田嗣治が確立したものである。
私は、そのスタイルを確立した時期の、この絵が好きだった。
「二人の友達」

細い線で輪郭が描かれており、写実的というよりはむしろ「絵らしい」のに、先述の乳白色の裸体の質感、量感によって、とてもなまめかしいのだ。こういった肌のきめ細かさに美しさを見出すのは、とても日本的に思え(平安時代の美女を連想した)、西洋の油彩でこの美しさを表現することを編み出したのは、奇跡みたいだと感じた。(岩彩もあり。)
こういった裸婦の絵が続き、先の群像大作に至る。
展示の中では、このあたりが一番見応えがあり、心打たれた。
貴重な、観に行くべき展示だと思う。
群像大作4点の後に、世界初公開の「馬とライオン」が続き、その後は宗教絵画が主になってくる。その間に描いているはずの戦争画は今回は展示されていなかった。
信仰からくるエネルギーで描いた入魂の絵も、全身全霊が注ぎ込まれているようで素晴らしかったのだけれど、私は先に書いた、前半の、自分のあるべきスタイルを模索し、そして確立したあたりの絵が好きだった。
照明がガラスに反射して、絵を見づらいことが多かったのが残念だった。どうにか解決できないのだろうか。


Mama’s Gun

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