2008年報道写真展/雪渡り

・2008年報道写真展へ

東京写真記者協会が主催。
1年間のニュースをダイジェストで見られる感じ。こんなことあったなぁ・・というものがいろいろある。だいぶ昔のことに思えるニュースが今年のものだったり、逆に、つい最近見た気がするニュースが、何ヶ月も前のものだったり。2008年を振り返るのに相応しい展示だった。それから、覚えていないことや知らなかったことがたくさん。いかに世の中の出来事に鈍感であるかに気づいた。世間で何が起こっているのかについて、あまりアンテナを張っていないこと、意識していないことは、自分でも認識していた。いやむしろ、水の中で外の音を聞いているような状態だったといっていいくらい。でも、それでも聞いてはいるつもりだったのだけれど。
それにしても、こういう写真も難しそう。絶対記事にする必要がある大事なポイントで、しっかりいい写真を撮るのは、なかなか大変だろう。展示されているものにも、ピントが微妙な写真や、トリミングすればいいのに・・というような余計なものが写っている写真があった。もちろん、どうやって撮ったんだろう、というようなかっこいい写真もたくさんあったけれど。一番好きだったのは、松井秀喜選手が結婚の報告をしている写真で、澄み渡った爽やかな青空の下、奥さんの似顔絵を2枚手に持って、いかにも嬉しそうな表情をしている写真。あと動物写真も。ペンギンがパタパタ走っているような写真など、とても可愛かった。それから、ペットブームの影として、捨てられた犬がつぶらな瞳で写っていて、その後死んでしまったという文が添えられている写真の前では、ついつい立ち止まってしまった。
展示自体は最終日のこともあって結構混んでいた。若いカップルや家族連れ、お年寄りや、一風変わった容貌の人、といろんな人が見に来ていたのが印象的だった。


雪渡り (日本の童話名作選)

雪渡り (日本の童話名作選)

1921年発表(宮沢賢治は当時25歳)
生前唯一原稿料を得たもの。

雪にまつわる表現が素晴らしい。まさに絵のように頭の中にイメージが膨らんだ。
出だしから
「雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなり、空も冷たい滑らかな青い石の板でできているらしいのです。」
と始まって、
「お日様がまっ白に燃えて百合のにおいをまきちらしまた雪をぎらぎら照らし」
「木なんかみんなザラメを掛けたように霜でぴかぴかしています。」
と続く。
雪靴を履いた四郎とかん子の足音は、「キックキック」と鳴る。
こういった、目を見張るほど的確で、詩的な表現、豊かに広がる表現が、どんどん続いていく。
目に映るもの、耳に入るもの、肌に触れるもの、ふいに届く匂い、直に感じる味わい、そのあらゆるものを、ふわりと拾い上げ、すとんと言葉に落とす力。感度の高さとはこういうことなんだな、と思った。
お話の内容に関しては、私はついついどんでん返しがあるものかと思って読み進めてしまった。
かいつまむと、「狐は人を騙すものだ」という悪印象、あらぬ誤解を、狐の子供と人間の子供が解消する運びとなるお話だ。
四郎とかん子が、狐の紺三郎が差し出したお団子を、紺三郎への信頼をもとに美味しく食べる。
そして紺三郎は狐の生徒たちに、
「今夜みなさんは深く心に留めなければならないことがあります。それは狐のこしらえたものを賢い少しも酔わない(酒で酔っ払っていない)人間のお子さんがたべてくだすったという事です。そこでみなさんはこれからも、大人になっても、うそをつかず人をそねまず、私ども狐の今までの悪い評判をすっかりなくしてしまうだろうと思います。」
と言う。
なんとなく習慣的に、やっぱり騙していた、みたいな結末が訪れるもの、と私は思っていたので、この展開は新鮮だった。
紺三郎のこの言葉の次の文が好き。
「狐の生徒はみんな感動して両手をあげたりワーッと立ちあがりました。そしてキラキラ涙をこぼしたのです。」
というもの。
なんとも可愛らしく、優しい発想だと思った。
読み聞かせたいお話。



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